相続手続きで法定相続情報一覧図を利用したい場合、まずは必要書類をそろえる必要があります。
法定相続情報一覧図は、法務局に戸籍謄本等の書類を提出し、相続関係を確認してもらったうえで交付される書類です。
そのため、一覧図だけを作成すればよいわけではなく、被相続人や相続人に関する戸籍謄本等を準備しなければなりません。
この記事では、司法書士である私が、法定相続情報一覧図を取得するために必要となる書類について、できるだけわかりやすく解説します。
法定相続情報一覧図の制度全体について知りたい方は、先に法定相続情報一覧図とは?メリット・必要書類・作成の流れを司法書士が解説をご覧ください。
法定相続情報一覧図を取得するには書類の準備が必要です
法定相続情報一覧図を取得するには、法務局へ「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出」を行います。
この申出の際には、戸籍謄本等の必要書類と、作成した法定相続情報一覧図を提出します。
法務局では、提出された戸籍謄本等の内容と法定相続情報一覧図の記載内容が合っているかを確認します。
内容に問題がなければ、登記官の認証文が付いた「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
つまり、法定相続情報一覧図を取得するためには、次の2つの準備が必要です。
・相続関係を確認するための戸籍謄本等を集めること
・戸籍の内容に基づいて法定相続情報一覧図を作成すること
戸籍の不足や一覧図の記載誤りがあると、法務局から補正を求められることがあります。
そのため、必要書類を正確に確認しながら準備することが大切です。
法定相続情報一覧図の必要書類一覧
法定相続情報一覧図を取得するために必要となる主な書類は、次のとおりです。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・相続人の住民票
・法定相続情報一覧図
・申出書
・代理人が申出をする場合の委任状など
ただし、実際に必要となる書類は、相続関係によって変わることがあります。
たとえば、代襲相続がある場合や、兄弟姉妹が相続人になる場合、相続手続きが終わらないうちに相続人の一人が亡くなっている場合などは、追加の戸籍謄本等が必要になることがあります。
被相続人に関する書類
被相続人とは、亡くなった方のことです。
法定相続情報一覧図を取得するには、被相続人の相続人が誰であるかを確認する必要があります。
そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等や、最後の住所を確認するための書類が必要になります。
相続人に関する書類
相続人については、現在の戸籍謄本などが必要になります。
また、法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合などには、住民票が必要になることがあります。
相続人の数が多い場合は、その分だけ確認する書類も増えるため注意が必要です。
作成して提出する書類
法務局へ提出するためには、戸籍謄本等を集めるだけでなく、法定相続情報一覧図そのものを作成する必要があります。
また、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書も提出します。
一覧図の記載内容と戸籍の内容が一致していない場合は、補正を求められることがあります。
代理人が申出をする場合の書類
司法書士などの代理人が申出をする場合には、委任状などの代理権限を証明する書類が必要になります。
ご自身で申出をする場合と、専門家に依頼して申出をする場合とでは、必要書類が一部異なります。
被相続人に関する必要書類
法定相続情報一覧図を取得するには、まず被相続人に関する書類を集める必要があります。
被相続人とは、亡くなった方のことです。
法務局は、被相続人の戸籍を確認することで、誰が相続人になるのかを判断します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
法定相続情報一覧図を取得するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等が必要になります。
これは、被相続人に配偶者や子がいるか、養子縁組をしているか、過去に結婚歴があるかなどを確認するためです。
現在の戸籍だけでは、相続人を正確に確認できないことがあります。
そのため、出生から死亡まで連続した戸籍を集める必要があります。
戸籍は、原則として本籍地の市区町村役場で取得します。
ただし、令和6年3月1日から戸籍証明書等の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも、戸籍謄本等を取得できるようになりました。
そのため、被相続人が本籍地を何度も移している場合でも、最寄りの市区町村窓口でまとめて取得できることがあります。
もっとも、広域交付で取得できる戸籍には一定の制限があり、請求できる人や取得できる証明書の種類にも決まりがあります。
必要な戸籍をすべて広域交付で取得できるとは限らないため、事前に窓口で確認しておくと安心です。
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
被相続人の最後の住所を確認するために、住民票の除票または戸籍の附票が必要になります。
住民票の除票とは、亡くなった方の住民票が除かれた後に発行される書類です。
戸籍の附票とは、その戸籍に入っている方の住所の履歴が記録された書類です。
相続登記をあわせて行う場合には、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所がつながるかどうかが問題になることがあります。
住所のつながりが確認できない場合には、追加の書類が必要になることもあります。
被相続人に関する書類は、法定相続情報一覧図を作成するうえで土台になる部分です。
ここで戸籍が不足していると、相続人を正確に確認できず、法務局から補正を求められることになります。
相続人に関する必要書類
法定相続情報一覧図を取得するには、被相続人だけでなく、相続人に関する書類も必要になります。
相続人については、現在も相続人として存在していることや、必要に応じて住所を確認するための書類を提出します。
相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人については、原則として相続人全員の現在の戸籍謄本が必要になります。
これは、相続人が現在も生存していることや、被相続人との関係を確認するためです。
たとえば、配偶者や子が相続人になる場合には、それぞれの現在の戸籍謄本を取得します。
被相続人の死亡後に取得した戸籍謄本を用意するのが一般的です。
被相続人が亡くなる前に取得した戸籍では、相続開始時点の状況を確認できないためです。
相続人の住民票が必要になるケース
法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載する場合には、相続人の住民票が必要になります。
住所の記載は必ずしも必要ではありませんが、相続登記や金融機関の手続きで利用することを考えると、住所を記載しておく方が便利な場合があります。
特に、法定相続情報一覧図を相続登記に利用する場合には、相続人の住所を記載しておくと手続きが進めやすくなります。
ただし、必要となる書類は手続きの内容や利用目的によって異なるため、実際にどこまで準備するかは事案に応じて確認する必要があります。
相続人が複数いる場合
相続人が複数いる場合には、相続人全員分の戸籍謄本が必要になります。一部の相続人だけの戸籍では、法定相続情報一覧図を作成するための資料として不十分です。
また、相続人の中にすでに亡くなっている方がいる場合には、代襲相続や数次相続の問題が生じることがあります。
このような場合には、さらに追加の戸籍謄本等が必要になるため、相続関係を慎重に確認する必要があります。
作成して提出する書類
法定相続情報一覧図を取得するには、戸籍謄本等を集めるだけでなく、法務局へ提出する書類を作成する必要があります。
主に作成する書類は、「法定相続情報一覧図」と「申出書」です。
法定相続情報一覧図
法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人との関係を一覧にまとめた書類です。
戸籍謄本等の内容に基づいて、被相続人の氏名、生年月日、死亡日、相続人の氏名、生年月日、続柄などを記載します。
法務局のホームページには、相続関係ごとの様式や記載例が用意されていますので、それを参考にして作成することができます。
ただし、戸籍の内容と一覧図の記載が一致していない場合や、相続人の記載漏れがある場合には、法務局から補正を求められます。
特に、代襲相続や数次相続がある場合には、相続関係が複雑になりやすいため注意が必要です。
申出書
法定相続情報一覧図の写しを取得するには、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を作成して提出します。
申出書には、申出人の住所・氏名、被相続人の表示、交付を受ける通数、利用目的などを記載します。
申出書の様式は、法務局のホームページからダウンロードできます。
法定相続情報一覧図と申出書は、どちらも法務局へ提出する重要な書類です。
戸籍謄本等をそろえていても、一覧図や申出書の記載に誤りがあると手続きが止まってしまうことがあります。
提出前に、戸籍の内容と一覧図・申出書の記載が合っているかを確認しておきましょう。
代理人が申出をする場合に必要な書類
法定相続情報一覧図の申出は、相続人ご本人が行うこともできますが、司法書士などの代理人に依頼することもできます。
代理人が申出をする場合には、通常の必要書類に加えて、代理権限を確認するための書類が必要になります。
委任状
司法書士などの代理人が申出をする場合には、申出人から代理人への委任状が必要になります。
委任状には、法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出に関する手続きを代理人へ依頼することを記載します。
委任状の内容に不備があると、法務局で手続きが進まないことがありますので、誰が誰に何を委任するのかを明確に記載することが大切です。
代理人の資格を証明する書類
司法書士などの資格者代理人が申出をする場合には、代理人の資格を証明する書類が必要になることがあります。
司法書士に依頼する場合には、司法書士側で必要な書類を準備するのが通常です。
そのため、依頼者の方が細かい書類まで自分で準備する必要はあまりありません。
代理人に依頼する場合でも戸籍等は必要
代理人に依頼した場合でも、被相続人や相続人に関する戸籍謄本等が不要になるわけではありません。
ただし、司法書士に依頼すれば、戸籍の収集や法定相続情報一覧図の作成もあわせて任せられる場合があります。
戸籍の数が多い場合や、相続関係が複雑な場合には、代理人に依頼することで手続きの負担を減らすことができます。
相続関係によって追加書類が必要になるケース
法定相続情報一覧図の必要書類は、相続関係によって変わることがあります。
配偶者と子だけが相続人になるようなシンプルなケースであれば、比較的わかりやすいことが多いです。
一方で、代襲相続や数次相続がある場合、兄弟姉妹が相続人になる場合などは、追加の戸籍謄本等が必要になることがあります。
代襲相続がある場合
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった方が、被相続人より先に亡くなっている場合などに、その子が代わって相続人になる制度です。
たとえば、被相続人の子がすでに亡くなっていて、その子に子どもがいる場合には、孫が相続人になることがあります。
このような場合には、亡くなった子の戸籍謄本等や、代襲相続人となる孫の戸籍謄本等が必要になります。
相続関係が一段複雑になるため、一覧図の記載にも注意が必要です。
数次相続がある場合
数次相続とは、相続手続きが終わらないうちに、相続人の一人が亡くなってしまった場合のことです。
たとえば、父が亡くなった後、父の相続手続きが終わる前に母も亡くなったようなケースです。
この場合、最初の相続だけでなく、その後に発生した相続関係も確認する必要があります。
そのため、亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等や、その相続人の相続人に関する戸籍謄本等が必要になることがあります。
兄弟姉妹が相続人になる場合
被相続人に子がおらず、父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になることがあります。
兄弟姉妹が相続人になるケースでは、被相続人の戸籍だけでなく、父母の戸籍なども確認する必要があります。
これは、被相続人に他の兄弟姉妹がいないかを確認するためです。
さらに、兄弟姉妹の中にすでに亡くなっている方がいる場合には、甥や姪が相続人になることがあります。
このような場合には、必要となる戸籍の範囲が広くなりやすいため、書類の収集に時間がかかることがあります。
このように、相続関係が複雑な場合には、基本的な必要書類だけでは足りないことがあります。戸籍をどこまで集めればよいか分からない場合は、早めに専門家へ確認すると安心です。
戸籍の取得でよくある注意点
法定相続情報一覧図を取得するためには、戸籍謄本等を正確に集める必要があります。
しかし、相続手続きで必要になる戸籍は、普段の生活で取得する戸籍よりも範囲が広くなることがあります。
ここでは、戸籍を集める際によくある注意点を紹介します。
戸籍が途中で抜けている
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を集める必要があります。
ところが、現在の戸籍だけを取得しても、出生から死亡までのすべての内容が確認できるとは限りません。
結婚、転籍、戸籍の改製などによって、戸籍がいくつかに分かれていることがあります。
そのため、戸籍を集める際には、前後の戸籍がきちんとつながっているかを確認することが大切です。
本籍地が何度も変わっている
被相続人が本籍地を何度も移している場合には、複数の役所で戸籍を取得する必要が出てくることがあります。
最近では戸籍証明書等の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口で戸籍謄本等を取得できる場合もあります。
ただし、すべての戸籍を広域交付で取得できるとは限りません。
必要な戸籍がそろわない場合には、従来どおり本籍地の市区町村役場へ請求する必要があります。
古い戸籍の読み取りが難しい
相続手続きでは、古い戸籍や除籍謄本、改製原戸籍を確認することがあります。
古い戸籍は、手書きで記載されていたり、現在とは違う形式で作られていたりするため、内容を読み取るのが難しい場合があります。
特に、相続人の漏れがないかを確認するには、出生、婚姻、死亡、養子縁組などの記載を丁寧に確認する必要があります。
読み取りを誤ると、法定相続情報一覧図の記載にも誤りが生じる可能性があります。
相続人を漏れなく確認する必要がある
法定相続情報一覧図は、戸籍に基づいて法定相続人を明らかにするための書類です。
そのため、相続人の一部が漏れていると、正しい一覧図にはなりません。
たとえば、前婚の子、養子、亡くなった子の子などが相続人になるケースもあります。
相続人が誰になるのかを判断するには、戸籍の内容を正確に読み取ることが重要です。
戸籍の取得や読み取りは、相続手続きの中でもつまずきやすい部分です。
戸籍がそろっているか不安な場合や、古い戸籍の内容が分かりにくい場合には、無理に進めず、専門家に確認することをおすすめします。
必要書類を集めるのが難しい場合は司法書士へ相談を
法定相続情報一覧図の必要書類は、相続関係がシンプルな場合であれば、ご自身で集められることもあります。
たとえば、相続人が配偶者と子だけで、本籍地の移動も少ない場合には、比較的進めやすいケースもあります。
一方で、次のような場合には、戸籍の収集や確認が難しくなることがあります。
・被相続人が本籍地を何度も移している
・古い戸籍や改製原戸籍を読む必要がある
・相続人が多い
・兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる
・代襲相続や数次相続がある
・相続登記もあわせて進めたい
このようなケースでは、必要な戸籍をどこまで集めればよいのか判断しにくく、書類が不足したまま法務局へ申出をしてしまうことがあります。
書類に不足や記載誤りがあると、法務局から補正を求められ、手続きに時間がかかってしまいます。
司法書士に依頼すれば、戸籍の収集、相続関係の確認、法定相続情報一覧図の作成、法務局への申出までまとめて任せることができます。
また、不動産の相続登記が必要な場合には、法定相続情報一覧図の取得とあわせて手続きを進めることもできます。
「必要書類を自分で集められるか不安」
「戸籍がそろっているか分からない」
「相続登記も一緒に進めたい」
という方は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。
まとめ
法定相続情報一覧図を取得するには、戸籍謄本等の必要書類をそろえたうえで、法定相続情報一覧図を作成し、法務局へ申出を行う必要があります。
主な必要書類は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、被相続人の住民票の除票または戸籍の附票、相続人全員の現在の戸籍謄本、法定相続情報一覧図、申出書などです。
相続人の住所を一覧図に記載する場合には、相続人の住民票が必要になることがあります。
また、代理人に依頼する場合には委任状などの書類が必要になります。
相続関係がシンプルな場合には、ご自身で必要書類を集めて申出をすることもできます。
しかし、代襲相続や数次相続がある場合、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合、本籍地を何度も移している場合などは、必要となる戸籍の範囲が広くなり、書類の収集が難しくなることがあります。
法定相続情報一覧図は、相続登記や銀行手続きなどで利用できる便利な書類です。
一方で、取得するためには戸籍の内容を正確に確認し、相続関係に合った一覧図を作成する必要があります。
とのさき司法書士事務所では、相続登記の手続きとあわせて、法定相続情報一覧図の取得にも対応しています。
法定相続情報一覧図の必要書類や相続登記でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
